末期がん、後悔しないための選択: 在宅看取りという最期の過ごし方
末期がん、後悔しないための選択:
在宅看取りという最期の過ごし方
「余命3ヶ月」。医師からそう告げられたとき、あなたなら何を考えるでしょうか。
大切なご家族が末期がんと診断されたとき、多くのご家族が直面するのが「これからどうするか」という治療の選択です。
「病院で最期まで治療を続けるべきなのか」
「自宅で過ごさせてあげたいけれど、私たちに看られるのだろうか」
「痛みが強くなったとき、家で対応できるのか」
「在宅看取りを選んで、後悔しないだろうか」
このような不安と葛藤の中で、どうするかを決めなければならないのは、その状況に直面しなければ想像がつかない、大きな選択だと思います。
今回は、末期がんの在宅看取りについて、準備すべきこと、費用負担、そして後悔しないための選択について、在宅医療の現場から詳しくお伝えします。
末期がんの「在宅看取り」とは何か
在宅看取りの基本的な考え方
在宅看取りとは、病院ではなく住み慣れた自宅で最期までの時間を過ごし、そのまま自宅で息を引き取る、そして周囲の方は最期を見届けるということです。
これは「治療をあきらめる」ことではなく、むしろ「人生の最終段階をどう生きるのか」を最優先に考える医療の形です。
病院での積極的治療から、苦痛を和らげる緩和ケア中心の医療へとシフトし、残された時間を可能な限り穏やかに、その人らしく過ごすことを目的としています。
なぜ今、在宅看取りが増えているのか
在宅での死亡は、実際に増加している
厚生労働省の「人口動態調査」によると、自宅で死亡する人の割合は、1951年には82.5%でしたが、2009年には12.4%にまで低下しました。長年にわたって、自宅で最期を迎える方は減り続けてきました。
しかし、近年この流れに変化が起きています。
第一生命経済研究所の分析によると、東京都における「在宅看取り死者数」は2013年の1万1,053人から、2021年には2万1,587人まで増加しており、2013年から2021年までの在宅死者数の増加に対する「在宅看取り死者数」増加の寄与率は89.3%に達しています。
つまり、在宅死者数の増加傾向は、約9割が「在宅看取り死者数」の増加によるもので、在宅看取りは確実に広がりを見せています。
参考資料:多死社会のゆくえ(1)「在宅死急増、理由は看取りか孤独死か?」
国民の希望と現実のギャップ
この在宅看取りの増加は、国民の希望を反映したものでもあります。
厚生労働省の調査「終末期医療に関する調査」によれば、自宅で療養して必要になれば医療機関等を利用したいと回答した者の割合を合わせると、60%以上の国民が「自宅で療養したい」と回答しています。
在宅看取りは増加しているとはいえ、まだ6割の人が望んでいる水準には達していません。しかし、確実にその希望に近づきつつあるのが現状です。
在宅看取りが増加している背景
在宅看取りが増加している背景には、いくつかの重要な理由があります。
- 死亡者数の急増への対応
死亡者数は、2040年にかけて今よりも約40万人増加すると予測されています。すべての方を病院で看取ることは、物理的にも経済的にも困難になっていきます。
- 価値観の変化
「生活の質(QOL)」を重視する価値観が広がっています。延命治療よりも、残された時間をその人らしく過ごすことを優先する考え方が浸透してきました。
- 医療の進歩
在宅でも高度な緩和ケアが可能になりました。痛みのコントロール、呼吸困難の緩和、点滴管理など、かつては病院でしかできなかった医療が、今では自宅でも提供できるようになっています。
- 24時間サポート体制の整備
2006年の診療報酬改定で「在宅療養支援診療所」が創設されるなど、24時間対応できる在宅医療の体制が徐々に整備されてきました。
- 家族との時間の価値
病院では面会時間に制限があり、家族が十分に付き添えないこともあります。自宅なら、好きな時間に好きなだけ一緒にいることができます。この「時間の自由」が、患者様にとってもご家族にとっても、何よりも貴重なものであると認識されるようになってきました。
- 在宅医療を担う医療機関の充実
力のある在宅医療機関が増えてきたことも、在宅看取りの増加を後押ししています。数多くの在宅看取りに対応できる医療機関も登場し、在宅医療の質と量が向上しています。
時代は確実に変わりつつある
長年にわたって減少し続けてきた在宅での看取りが、ここ10年ほどで増加に転じています。これは単なる偶然ではなく、国の政策、医療体制の整備、そして何よりも「住み慣れた場所で最期を迎えたい」という国民の願いが、少しずつ実現しつつある証です。
板橋区においても、この流れは例外ではありません。在宅看取りを希望される方々のために、私たちのような医療機関が、一人ひとりに寄り添った医療を提供する体制を整えています。
在宅看取りのメリットとデメリット
ただ、在宅看取りでも全てが完璧なわけではありません。次に、在宅看取りのメリットとデメリットについて解説します。
在宅看取りのメリット
- 住み慣れた環境で過ごせる
自分の部屋、使い慣れた家具、窓から見える景色。これらは今まで歩んできたその人の人生そのものです。最期までその中で過ごせることは、計り知れない安心感をもたらします。
- 家族との時間を大切にできる
孫の顔を見る、家族と食事を囲む、何気ない会話を交わす。病院では難しいこうした日常が、在宅では可能です。残された時間を、本当に大切な人たちと過ごすことができます。
- 自分のペースで生活できる
起きる時間、食事の時間、入浴のタイミングなどすべてを自分のペースで決められます。好きな音楽を聴き、好きなものを食べ、好きな時に眠る。この「自由」が、尊厳ある最期につながります。
- 食事の制限が少ない
病院では食事制限がありますが、自宅では食べたいものを食べられます。「最期に食べたいもの」を家族が用意し、一緒に食卓を囲む、そんな温かい時間を過ごせます。
- 経済的負担が軽減されることも
入院費用と比較すると、在宅医療の方が経済的負担が少ない場合があります。また、医療保険や介護保険を活用することで、費用を抑えることができます。
在宅看取りのデメリットと不安
- 家族の介護負担
24時間体制での介護は、家族にとって身体的にも精神的にも大きな負担になります。特に独居やいわゆる老老介護の場合、この負担は深刻です。
- 急変時の不安
「夜中に容態が急変したらどうしよう」
「痛みが強くなったときに対応できるだろうか」
こうした不安は、在宅看取りを選択する上で最も大きな障壁となるでしょう。
- 医療設備の限界
自宅には病院のような医療設備がありません。できる医療処置には限界があるのも事実です。
- 近隣への配慮
集合住宅などでは、急変時や看取りの際に近隣への配慮が必要になる場合があるかもしれません。
- 家族の精神的負担
「このまま家で看ていて本当にいいのだろうか」という迷いや罪悪感を抱えながらの介護は、精神的に大きな負担となります。
在宅看取りで後悔しないための準備
このように、在宅看取りを選ぶに当たっていろいろな壁があります。そのため、在宅看取りで後悔しないためには、事前の準備が非常に重要になってきます。以下にやるべき準備について順番に説明します。
- 本人の意思と家族の意向をすり合わせする
何よりも大切なのは、患者様ご本人の意思と家族の意向です。
「どこで最期を迎えたいか」
「どのような医療を受けたいか、受けたくないか」
「延命治療についてどう考えているか」
これらについて、元気なうちに、あるいは意思疎通ができるうちに話し合っておくことが重要です。どこまで家族が対応できるかについても、きちんと意見のすり合わせを行っておきましょう。
- 信頼できる在宅医療提供施設を見つける
在宅看取りの成否は、医療チーム次第といっても過言ではありません。
- 24時間対応してくれるか
- 緊急時にすぐに来てくれるか
- 痛みのコントロールに習熟しているか
- 家族の不安にも寄り添ってくれるか
これらのポイントを確認し、信頼できる医療チームを早めに見つけることが大切です。
当院ななみ在宅診療所は、24時間体制でサポートすることはもちろん、患者様ご本人やご家族との対話を大切にしています。「まずは一度相談したい」という段階からお気軽にご連絡ください。
- 訪問看護・介護サービスの活用
医師だけでなく、訪問看護師、訪問介護士、ケアマネージャーなど、多職種による支援体制を整えることが重要です。
訪問看護師は、日常的な医療処置や体調管理を行います。
訪問介護士は、入浴介助や食事介助など、生活面での支援を行います。
これらのサービスを組み合わせることで、家族の負担を大きく軽減できます。ここで大事なことは、在宅診療所と訪問看護師や訪問介護士が所属する事業所が異なる場合が多いことです。そのため、他職種との連携をしっかりとすることで、多職種連携をうまく機能させることができます。お互いの職種を尊重することが、結果的により良い医療・介護を提供できると考えています。
- 家族間での役割分担
一人で抱え込まないことが何よりも重要です。
介護は想像以上に長期戦になることがあります。家族間で役割を分担し、交代で休息を取れる体制を作りましょう。遠方に住む家族も、電話での声かけや経済的支援など、できることがあります。
- 緊急時の対応を決めておく
急変時にどうするか、あらかじめ確認しておくことが重要です。
- 救急車を呼ぶのか、呼ばないのか
- 心肺蘇生を希望するか、しないか
- 入院を希望するか、最期まで在宅を貫くか
これらについて、本人の意思を確認し、家族間でも共有しておきましょう。医師とも事前に話し合っておくことで、いざというときに迷わずに済みます。
そうは言っても、急激な体調変化が起こるとご家族も不安や心配から慌ててしまい、どうしたらいいか分からなくなってしまう、そのようなことがあることも事実です。いざという時に慌てないよう、普段の診察から、とにかくまず訪問看護ステーションあるいは当院緊急電話にご連絡をいただくようお伝えしています。
- 看取りの場所を整える
患者様が過ごしやすく、かつ介護しやすい環境を整えることも大切です。
- 介護ベッドのレンタル
- ポータブルトイレの設置
- 手すりの取り付け
介護保険を利用して、必要な福祉用具をレンタルできます。「介護の司令塔」ともいわれるケアマネージャーに相談することで、様々な対応が可能になります。
在宅看取りの費用負担:いくらかかるのか
経済的な不安も、在宅看取りを選択する上での大きな懸念事項です。具体的にかかる金額について解説します。
在宅医療にかかる費用
在宅診療は、訪問診療料と在宅時医学総合管理料を合わせた金額が基本料金となります。1割負担の方は月2回の在宅診療が約7000円となります。
- 重症度や緊急往診、検査、在宅酸素などの医療行為を行うことで料金は変わります。
- 年齢や所得区分によっても料金が異なりますし、自己負担限度額の設定などもあります。
また、多職種連携のひとつとして、ケアマネージャー(介護支援専門員)への情報提供を行っており、居宅療養管理指導費として算定しています。
介護保険からの費用で、目安は1割負担の方でひと月に約 600円です。
入院との費用比較
入院と費用を比較してみますと、実は、在宅医療の方が入院よりも経済的負担が少ない場合が多いのです。
入院の場合、医療費に加えて差額ベッド代、食事代、日用品費などがかかり、月に10万円以上の負担になることも珍しくありません。
一方、在宅医療では住居費や食費は変わらないため、純粋に医療・介護費用の負担のみとなります。
正確な金額が知りたい場合は、実際にお問い合わせください。
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在宅看取りで後悔しないために
在宅看取りで後悔しないために、いくつか注意点があります。一つずつ解説してみます。
完璧を目指さない
介護に完璧はありません。どれだけやったとしても「もっと出来たのではないか」と思ってしまいがちですが、できないことがあって当然なんです。「もっとこうしてあげればよかった」と自分を責めないでください。
あなたができることを精一杯やる。それで十分なのです。
専門家を頼る
わからないこと、不安なことがあれば、すぐに医師や看護師に相談しましょう。夜中でも構いません。「こんなことで電話して申し訳ない」と遠慮する必要はありません。
私たち医療者は、そのためにいるのです。
自分の時間も大切にする
介護に疲れ果ててしまっては、患者様のそばにいることもできなくなります。
時には訪問介護やショートステイを利用して、自分の時間を作りましょう。休息を取ることは、決して「逃げ」ではありません。長く続ける ために必要な「充電」なのです。
「今」を大切に
「もっと早く気づいてあげればよかった」
「もっとこうしてあげればよかった」
後悔は尽きないかもしれません。でも、過去は変えられません。変えられるのは「今」だけです。
今、目の前にいる大切な人との時間を、一瞬一瞬大切に過ごしてください。それが、後悔を最小限にする唯一の方法です。
ななみ在宅診療所ができること

当院は、末期がん患者様の在宅看取りを数多くサポートしてきました。
24時間365日の安心サポート
夜中でも、休日でも、いつでもご連絡ください。24時間体制で対応します。
「痛みが強くなった」
「呼吸が苦しそう」
「様子がおかしい」
どんな小さな変化でも、すぐにご連絡ください。必要に応じて往診します。
痛みのコントロールに注力
末期がんの在宅医療で最も重要なのが、痛みのコントロールです。
当院では、緩和ケアに力を入れており、適切な痛み止めの使用によって、可能な限り苦痛のない時間を過ごしていただけるよう努めています。
家族の心のケアも
在宅看取りでは、患者様だけでなく、ご家族のケアも重要です。
介護の疲れ、精神的な負担、「これでいいのだろうか」という不安。すべて私たちに話してください。医療の専門家として、そして一人の人間として、ご家族の心に寄り添います。
多職種との連携
訪問看護師、ケアマネージャー、訪問介護士など、様々な専門職と連携しながら、患者様とご家族をトータルでサポートします。
チームで支えるからこそ、安心して在宅看取りを選択していただけます。
最期の選択に正解はない
「病院か、在宅か」
「積極的治療か、緩和ケアか」
これらの選択に、絶対的な正解はありません。
患者様の状態、ご家族の状況、本人の希望、それぞれによって最善の選択は異なります。
ただ一つ言えることは、後悔しないためには、本人と家族がよく話し合い、納得して選択することが何よりも大切だということです。
そして、その選択をサポートし、最期まで寄り添うことが、私たち在宅医療に携わる者の使命だと考えています。
まずはご相談ください
「在宅看取りを考えているけれど、不安がいっぱい」
「本当に家で看られるのだろうか」
「費用はどのくらいかかるのか」
「今の状態で在宅に移行できるのか」
どんな不安や疑問でも構いません。まずは私たちにお話しください。
「まずは一度診てもらいたい」「話だけでも聞いてほしい」という方も、お気軽にご連絡ください。
LINEで気軽にご相談を
ななみ在宅診療所では、LINEでのご相談も受け付けています。
「こんなこと聞いてもいいのかな」という小さな疑問でも大丈夫です。まずはLINEで気軽にお問い合わせください。
24時間いつでもメッセージを送っていただけます。営業時間内に順次お返事いたします。
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